ライアーゲーム秋山深一様にぞっこんLOVE!!(笑)
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全編をアップするのに時間がかかりそうですので
まずはブログへアップしときます^^
ういーまだ半分も終わってない
がっ、がんばります!!


abyss11 前編

三島によって篭められた部屋には何もなかった。
窓も明かりも時計も、生活に関するものが何一つないがらんどうとした四角い部屋。
暗闇が支配するその場所はまさに人を幽閉する為に作られた残酷な空間だった。

「秋山さん…」

ぽつりと呟いた直は抱えるようにして座っていた膝に顔を埋めた。
連れさられてから特に何もされてはいなかった。
拘束具をつけられた訳でもなければ、拷問をされたりした訳でもない。
だがこの場所の本当の恐怖を直はすぐ知ることとなった。
窓もなく光もささない空間に監禁されることが時間の感覚を狂わせた。
今が朝なのか昼なのか、閉じ込められて何日が過ぎたのか
それすら全く分からない、「無」の世界。
虚無という名の地獄は静かに、
そして確実に直の心に闇を落としていた。
「怪我…大丈夫だったのかな?」
直の脳裏には深々と背中にナイフが刺さった秋山の姿が
フラッシュバックしていた。
あの日から何日経過したかも分からず放置され続けている直に
秋山がどうなったのかなど知るすべもなかった。
ただもう、彼の生命力を信じて祈ることしか出来なかった。
直は秋山を心に想うことで気が狂いそうになりそうな
孤独を耐えようとしていた。
その姿はまるで断崖絶壁の端に咲く花のように健気だった。


「ふーーん、直ちゃんも中々頑張るよね。」

別室から直の様子をモニターしていた三島の口元に残酷な笑みが浮かぶ。
秋山と同じように心理学を学んだ彼は
人を貶める手段と方法とを熟知していた。
彼女のような明朗で天真爛漫な人間には今の環境はあまりにも過酷だった。
闇の中で時間の概念が奪われたまま、
愛しいものの消息すら掴めないという現実が
彼女にどのような病を産み落とすことになるのか…。
はたまたこんな状況でも今のままの彼女でいられるのか。
ハセガワや、秋山でさえも陥落させた神崎直という人間に
三島は興味を抱いていた。
今はただ四角い箱のような部屋でただ「生かされている」
だけの人形でしかない彼女がこの地獄に本当に耐えうるのだろうか。
そして満身創痍で死にかけていた秋山は彼女を助けに現れるのか。
ゲームの駒は全て揃った。
後はそれらが動くのを待つばかりだ。
三島はにやりと笑いながら蛇のような眼差しで直を見つめていた。
暗闇の中、心細げな表情を浮かべながら
どこか希望を失っていない瞳は誰を想うのだろう。
ククと喉の奥から掠れた笑い声を洩らし、三島はモニターの電源を切った。
「秋山…早くこないと彼女がどうなっても知らないよ」
嗜虐に満ちた三島の心は未だ現れぬ秋山へ向かって牙を剥こうとしていた。
その手始めとして彼が心を傾ける相手である神崎直を壊せば
秋山は一体どういう反応を見せるのだろうか?
そのときの彼を想像すると三島は身がうち震えるほどの興奮を覚えた。
復讐という甘美な囁きに心を躍らせながら
三島は秋山の到着をいまかいまかと待ちわびていた。




「……ん」

悲痛な声で自分を呼ぶ直の声を遠くの方で聞いたような気がした。
それが深層まで堕ちていた秋山の意識を揺り動かす。
直の呼ぶ声が秋山の意志力を急速に覚醒へと導いていた。
ゆっくりと瞬かれる瞳…
はじめはぼんやりとしていた視界がだんだんと輪郭を捉えはじめる。
誰にもいない部屋にうつぶせの状態で寝かされていた秋山は自分の姿を仰ぎ見た。
「酷い姿だな」
背中と肩に負った傷のおかげで厚く巻かれた包帯が目に入った。
まさに満身創痍という言葉がぴったりくる己の姿に秋山は皮肉げな笑みを浮かべた。
そんな自分を厭おうともせずに、秋山は体を起こそうと両腕を床へと付いた。
「…く」
やけに重たく感じる体は動かすたびに激痛が走った。
引き攣れるような痛みに秋山は顔を歪ませる。
しかし今はそんなことを言っている場合ではない。
三島という得体の知れない相手に囚われた彼女を助けなければならなかった。
最大限の気力を振り絞って秋山はなんとか起き上がった。
またもや訪れる強烈な眩暈が再び秋山を襲う。
「今は、倒れてなんかいられないだろう」
自分を叱咤するように呟いた秋山は霞のかかった視界の中ゆっくりと歩き始めた。
それだけのことだけなのに体力が消耗されて呼吸があがる。
高熱を孕む体が悲鳴を上げていた。
額を落ちる冷たい汗を拭いながら、
秋山は壁にすがることでなんとか体を支え歩みを進めた。
豪奢な屋敷の中を出口を求めて彷徨う。
自分が動けるような状態ではないことは秋山にもよく分かっていた。
こんな自分が果たして彼女を助けられるのかどうかも疑問に感じていた。
しかし直への恋情が秋山を突き動かしていた。
立ち向かわなければならない相手のこともまるで分からないというのに
秋山は直を助けるために再びその身を危険の中に晒そうとしていた。
いつもならば用意する周到な計画もなにもなかった。
ただ彼女を救いたいという一念のみで秋山は己の限界を超えようとしていた。

続く

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